<概要>
FTO(エフティーオー)は、三菱自動車が製造していたスポーツクーペです。
三菱のホットモデルだった「ギャランクーペFTO」の名前を継承したモデルがFTOです。当初は日本国内専用車でしたが、2000年代以降日本から数多く並行輸出され、イギリス・ニュージーランド・ロシア・香港・シンガポール・マレーシア等の一部海外でも走っています。
駆動方式はFFのみで、モーターショーでAWD仕様が提案され参考出品された事はありますが、結局、市販される事はありませんでした。
それはプラットフォームを共有する、ミラージュ・ランサー系が直列4気筒専用設計だったのに対し、FTOは当初よりV型6気筒エンジンを標準としており、横置きV6の後側バンクのシリンダーが4WDシステムのビスカスカップリングに干渉する為です。
直線的基調が多い三菱車の中では、珍しく曲線で構成されたデザインです。また、重いV6エンジンを搭載するために足回り関係は比較的硬めの設定がなされています。
ゲーム『グランツーリスモ』には、レーシングモディファイされた4WD(四輪駆動)タイプとして収蔵されています。また曲線で構成されたデザインは、現在においてなお個性的であり、海外では特に人気が高いです。
<車名の由来>
1994年10月、23年ぶりのネーミング復活となる三菱FTO。
車名は、「Fresh Touring Origination(フレッシュ・ツーリング・オリジネーション)」の略で 「新鮮で若々しいツーリングカーの創造」という意味の言葉を略したもので、コストパフォーマンスに優れたミドルクラスのFF駆動の2ドアスペシャリティクーペとしてデビューしました。
FTOという車名は、かつて1971年〜1975年までの間生産された、初代ギャランにサブネームとして使われていました。ギャランGTOと共に三菱のホットモデルだったギャランクーペFTOの名を受け継ぎ登場しました。
ただしギャランクーペFTOの車名の由来は、「Fresco Turismo Omologato」の略で、イタリア語で「公認された新鮮なフィーリングを持つ車」なので、意味合いは異なります。
ギャランクーペFTO
・ ・2代目FTO・ ・
<エクステリア>
FTOの特徴はまず曲線を多用した特徴的なボディに、筋肉質を思わせるスタイルです。
エクステリアデザインは、運動性能を高めるために前後オーバーハングを極端に切り詰めて全長は4320mmとコンパクトながら、全幅は1735mmと大きく張り出した前後フェンダーによって量感のあるワイドボディとなり、小さめのキャビンで全高は1300mmと低く、抑揚の強いサイドライン、スパッと切り落としたようなリヤエンドによって、特徴的なアグレッシブなスタイリングとなっています。
全幅が広げられた事で3ナンバー登録となり、ワイドなスタイリッシュでスペシャリティカーらしいエアロスタイルが特徴的です。
グレード展開は、「GPX」、「GR」、「GS」の3種類で、「GPX」はサイドエアダム、リアウイング、16インチアルミホイールが標準装備で、「GR」「GS」はそれぞれオプションとなります。
前期フロントビュー(写真は、GPX)
・
・リアビュー・ ・
<インテリア>
インテリアデザインは、エクステリアのアグレッシブな硬派スポーツクーペというテーマと、リンクする形で、モビルスーツ感覚と表現されます。
適度なタイト感を演出するコクピットは、センターコンソロールと、そのトップに位置するサブメーター、バケット調のファブリックシートが、ピュアスポーツムードを高めます。
全車フルオートエアコン、「GS」以外は電動格納式ドアミラー等が標準装備ですが、運転席、助手席エアバック、オーディオ、ABS等はオプションとなります。
・ ・内装1
・ ・内装2
<運動性能>
FTOはCA系ミラージュやランサーをベースとしたFFスポーツクーペで、エンジンは、可変バルブタイミングエンジン(MIVEC)を備えた200馬力を発生する2L・V型6気筒DOHC24バルブエンジンと、170馬力を発生するMIVEC無しV6・DOHC、そして125馬力を発生する1.8L・直列4気筒SOHC16バルブの3ユニット。
グレードによる展開は、2L・MIVECが「GPX」、2Lが「GR」、1.8Lが「GS」となります。
・・
・・
・・2L・V型6気筒DOHC24バルブMIVEC
・ ・2L・V型6気筒DOHC24バルブ・ ・1.8L・直列4気筒SOHC16バルブ・・
販売されたモデルの駆動方式は全てFF(前輪駆動)ながら、走行性能では極めて高いコーナリング性能を備えるのも大きな特徴です。
引き締められた足回りは、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク式で俊敏な走りを実現する、超硬めのチューニングとなっていますが、コーナーでの操縦安定性の高さ、回頭性の良さはFF車とは思えないもので、また、純正車としては尋常ならざるボディ剛性も持ち合わせていました。
尚、ホンダから1995年に、インテグラタイプRが発売されるまではFF車最速を誇っていたとも言われている程、FF車とは思えない位よく曲がるコーナリングマシンでした。
ミッションは5MTに加えて、ファジィシフト機構とマニュアルモードを備えた、INVECS-II スポーツモード4ATを用意し、INVECS-IIを初めて搭載したクルマとして脚光を浴び、そのコンセプトが評価され、この年、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
その記念モデルとして、1995年4月、特別仕様車「94 - 95日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞記念」を設定。最上級グレード「GPX」をベースとした、ダンデライオンイエローカラーの記念モデルのFTOが1ヶ月の500台限定で発売されました。
INVECS-II スポーツモード4ATとは、三菱独自のトランスミッション制御方式で、操縦安定性、快適性、安全性を高める事を狙いに、ファジー制御を多用したものです。
具体的には、ドライバーの運転傾向に合わせてシフトアップのタイミングを自動的に変える等といった事ができ、IIはその発展型。レバーをDレンジからスポーツモードに切り替えると、自由なシフトチェンジが可能となり、各ギヤを最高回転数まで引っ張って走る事も可能など、マニュアル感覚のキビキビとした走りが楽しめます。
同クラスの車種(日産・シルビア、トヨタ・セリカ、ホンダ・インテグラ等)がMT車の比率が高いのに対し、FTOは広告などでAT車を中心とした販売戦略を採っていた為か、当時のスペシャルティカーとしては珍しくAT車の比率が高かったのも特徴です。
・ ・INVECS-II スポーツモード4AT
・ ・日本COTY受賞記念のダンデライオンイエロー
<その後の傾向>
・1995年5月、特別仕様車「GRリミテッド」を設定。V6・2L(170馬力)搭載「GR」をベースに、リアスポイラ―やカセットオーディオ、16インチアルミホイール等を特別装備したモデル。
・1996年2月、運転席SRSエアバッグを全車標準装備にした他、MIVEC搭載で簡易装備の「GP」と、「GR」に16インチアルミ、リアスポイラー、サイドエアダム装備の「GRスポーツパッケージ」という新グレードを追加。
・1996年5月、スポーツモデル「GPバージョンR」を1ヶ月の特別限定生産。機能面ではスポーツサスペンション、ヘリカルLSD、前後ストラットタワーバー、マニュアルエアコン等を標準装備。
・1997年2月、ビッグマイナーチェンジ。
フロントバンパーが変更され、全長が45mm伸び、4365mmとなりました。また、「GRリミテッド」「GP」グレードが廃止され、「GRスポーツパッケージ」は「GXスポーツパッケージ」にネーム変更。
スポーツ仕様の限定モデルだった「GPバージョンR」が復活し通常設定され、エクステリアでは大型リヤスポイラーや、ディスチャージタイプのヘッドランプが標準装備されました。
後期フロントビュー(写真は、GP ver.R)
・ ・リアビュー・ ・
また、「GPバージョンR」はボディ色に対応して、3色のフロントシートカラーを設定したスペシャリティ感の高いコックピットを設定。スポーティな外観を強調すると共に、快適、ユーティリティ装備を充実しました。
写真は、 スコーティアホワイトのボディ色の場合(フロントブルーシートの設定)
他にも「GPX」「GXスポーツパッケージ」は助手席エアバックが標準装備となり、「GR」「GS」はマニュアルエアコンとなり、「GPバージョンR」はエアコン設定無し。全車ABSが標準装備となります。
運動性能では、2L・V6エンジンは180馬力にパワーアップ。INVECS-II スポーツモードATも「GR」「GS」以外、4速から5速に改められました。
・1997年11月、「GPバージョンR」「GXスポーツパッケージ」に、大型リヤスポイラー、サイドエアダム、フォグランプを装着してスポーティな外観を精悍に際立たせると共に、人気の高いエアコン、オーディオ、キーレスエントリーシステム、センタードアロック等を標準設定した「エアロシリーズ」を新たに追加。
機能面では、スポーツサスペンション、ヘリカルLSD、前後ストラットタワーバー、マニュアルエアコン等を標準装備。「GPバージョンR エアロシリーズ」はABSがオプション設定。
<生産中止>
1997年以降は特に変更もなく、2000年7月、新しく採用される側面衝突安全基準に適合させると採算が取れないとして、2000年8月をもってGTOと共に生産中止となりました。
生産工場は三菱自動車工業水島製作所。
総販売台数 3万8,028台
1994年 - 7,035台
1995年 - 2万773台
1996年 - 5,536台
1997年 - 2,433台
1998年 - 1,286台
1999年 - 680台
2000年 - 285台
<スペック>
FTOは、前期型、中期型、後期型の3期に分類されます。
主な変更点
<前期→中期>
・GPとGR SPORTS PACKAGEが追加。
・運転席のSRSエアバッグが標準装備に。
・キーレスエントリーシステムが変更となり、リモコンと鍵が一体型に変更。
<中期→後期>
・6A12エンジンがマイナーチェンジ。
最大出力 : 170PS/7000rpm → 180PS/7000rpm
最大トルク: 19.0kgm/4000rpm → 19.5kgm/4000rpm
・ABSが標準装備。
・ボディカラー変更。
スティールシルバー → シンフォニックシルバー ・ インペリアルレッドが廃止。ティンバーグリーンが追加。
・パーツが変更。
フロントバンパー ・(フロント・リア)シート ・ フォグランプ ・ ウインカーランプが変更。
・エアロシリーズが限定販売。
フロントヘリカルLSD ・(フロント・リア)ストラットタワーバー ・ スポーツサスペンション ・ ハイグリップタイヤ ・ ディスチャージヘッドランプ
モモ製ステアリング ・ カラーシート(ブルー・レッド・ブラック)※GPXのみ
前期型(1994-1995年)
<ボディカラー>
スティールシルバー ・ パッションレッド ・ インペリアルレッド ・ ピレネーブラック ・ ムーンライトブルー ・ スコーティアホワイト(全6色)
<グレード / 形式 / エンジン>
GPX(E-DE3A) (6A12 MIVEC)
GR (E-DE3A) (6A12)
GS (E-DE2A) (4G93)
中期型(1996年)
<ボディカラー>
スティールシルバー ・ パッションレッド ・ インペリアルレッド ・ ピレネーブラック ・ ムーンライトブルー ・ スコーティアホワイト(全6色)
<グレード / 形式 / エンジン>
GPX(E-DE3A) (6A12 MIVEC)
GP (E-DE3A) (6A12 MIVEC)
GR SPORTS PACKAGE(E-DE3A) (6A12)
GR (E-DE3A) (6A12)
GS (E-DE2A) (4G93)
後期型(1997-2000年)
<ボディカラー>
シンフォニックシルバー ・ パッションレッド ・ ピレネーブラック ・ アイセルブルー ・ スコーティアホワイト ・ ティンバーグリーン(全6色)
<グレード / 形式 / エンジン>
GPX(E-DE3A) (6A12 MIVEC)
GP VersionR (E-DE3A) (6A12 MIVEC)
GP VersionR Aero series(E-DE3A) (6A12 MIVEC) - 先行限定販売品
GX SPORTS PACKAGE (E-DE3A) (6A12)
GX SPORTS PACKAGE Aero series(E-DE3A)(6A12) - 先行限定販売品
GR (E-DE3A) (6A12)
GS (E-DE2A) (4G93)
<FTO-EV>
三菱自動車は割と早い時期から電気自動車の開発に乗り出していて、FTOをベースにした電気自動車「FTO-EV」も1998年に製作しています。
リチウムイオン二次電池によって最高出力70kWのモーターを駆動し、1回の充電で走れる距離は市街地であれば150km前後、最高速度は186km/hに達します。
「KAZ」が製作されるまで、ナンバープレートが付いて公道を走れる電気自動車としては最速を誇っていました。また、ここで養われたデータや技術は、後の「MiEV」シリーズに引き継がれました。
FTO-EV
<カスタマイズ>
チューニングカー愛好者の中では、いわゆるマイナー車と言われています。実際アフターパーツは同クラスのスポーツカーに比べ少なく、それはスポーツカーよりもツーリングカーの要素の方が大きい為です。
プラットフォームがランサー(正式にはミラージュ)と同じ為、4気筒エンジン搭載車にランサーエボリューションの4G63をスワップするユーザーもいます。その場合、フロントドライブシャフトを強化する必要が高いのでご注意を。
<モータースポーツ>
同クラスのスポーツカーの中ではマイナーな存在のFTOですが、1998年〜1999年には全日本GT選手権(JGTC、現SUPER GT)のGT300クラスに「チーム・テイボン・ラリーアート」より参戦し、「テイボン・トランピオ・FTO」というマシンが参戦していました。
ベース車のFTOに、FFの駆動方式はそのままにターボに換装し、エンジンはランサーエボリューションにも使用されてる4G63ターボを搭載。
エンジンチューナーはHKS、タイヤはトランピオ、ボディ設計はノバ・エンジニアリング、ボディデザインは市販FTOのデザイナーによるもので、チーム・テイボンのスポンサーはラリーアート。
ドライバーは、1998年度は中谷明彦と原貴彦のコンビで年間総合5位。1999年度は中谷明彦とラルフ・ファーマンのコンビで年間総合6位と、FTOを取り囲む環境は、すばらしく豪華なものでした。
最高位は決勝2位。1999シーズンを最後に撤退しました。
テイボン・トランピオ・FTO(1999年モデル)
この他にも、ジムカーナやダートトライアル等の競技等で使用されることが多いです。
また、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムのオープンクラス部門にエントリーしたFTOは、助手席にエンジンを置き、後ろに伸びたドライブシャフトでリアを駆動し、そこから再びディファレンシャルを介して、前に折り返す形で伸ばされたドライブシャフトによってフロントを駆動するという、変則的4WDを採用した例があります。